zowのプログラムな日々

日々のプログラミングとか

「不言実行」と「有言実行」

不言実行」と「有言実行」という言葉がある。元々は「不言実行」という言葉があって、それに対する言葉として現代になってから「有言実行」という言葉が生まれた。

不言実行」というのは黙って事を成すこと。古き良き日本人というか、多くを語らずやるべきことをやるという心構えというか、そういうのを表した言葉だと思う。奥ゆかしいというか、なんとも日本男児っぽい孤高でダンディズム溢れる言葉だ。

対して「有言実行」というのは成すべきことを言葉にして表した後で行うことだ。つまり先にやるべきことを宣言してから行う。「不言実行」というのはあくまでも過去の話で、現代では「有言実行」の方が当たり前だと思う。現代では何かをやる前に周囲にやることを伝えてからやるのだ。

サラリーマン社会では「報・連・相」なんて言葉もあるが、何かあったらとりあえず考える前に上司に言え、みたいな慣習が当たり前なので「不言実行」で仕事をやると逆に怒られたりもする。周囲とのコンセンサスがとれていないので、仕事に無駄が生じてしまうのだ。

不言実行」から「有言実行」を求められる世の中に変わったのは日本人が「集団生活」が当たり前になってきたからじゃなかろうかと思ってる。そりゃ昔の武家社会なんかも集団生活だったんだろうけども、個人に与えられていた裁量は今よりも大きかったはずだ。個人に与えられた裁量が大きいからこそ「不言実行」が許されていて、むしろよしとされてきたのである。性善説じゃないけども、周囲を信用して信頼していたからこそ、個人の裁量を大きくし、お互いが「不言実行」することによって相乗効果も産まれていたのではなかろうか。

逆に言うといちいち周囲に確認しているような人間は重用されなかったんではなかろうか。いちいち確認するのは自分の行動に自信と責任を持っていない証拠で、そういう人間は信用も信頼もできないと考えていたのではないだろうか。だからこそ「不言実行」という言葉が産まれたのだろうと想像する。

一体、いきなり何の話をしているのかと思う人も多いと思うが、実はクローラの話をしている。厳密に言うと、なんでクローラを作る気になれないのかをずっと考えていたのだ。

サラリーマン生活が長かったからだろうか、私はなにか行動を起こす前に周囲にやることを伝える習慣ができている。というか、言ったが最後、やらなきゃならないし、言わない限りやらない、みたいな雰囲気まである。なので、ニートになって周囲に行動をアピールする必要が無くなってから、一時期、本当に何もやる気が起きなかった。

仕事をしてないので、上司も居なければ部下も仲間もいない。何をするか宣言するべき場所が無いのである。これじゃいかんとブログを立ち上げて何か行動をする前にブログで宣言してみたりすることで、擬似的に「有言実行」をしていたのだけども、最近それに疑問を持つようになってきた。「お前何に縛られてんの?」みたいな。サラリーマン時代は周囲と同調するためにも「有言実行」じゃなければダメだったが、独りになったんだから「不言実行」でいいじゃんよ、みたいな。

仕事じゃないし、ましてやニートの趣味プログラミングなんだから、誰に何を言うでもなく、自分の裁量で自分の好きなものを作ればいいのである。

なんで自分で縛って不自由な気分に染まってそれが心地良いと勘違いしてんの?みたいに思うようになってきた。ある意味、やっとサラリーマン気質から開放されてきたのかもしれない。枠組みを決めてキチッとやる、なんてのは金貰ってる職業プログラマがやることで、趣味プログラマは気持ちの赴くまま、作りたいように作ればいいのである。

なんでこんな事を考えるようになったのか。それはgemを作り始めた事が原因だ。gemを作るにあたって、ユニットテストを書き始めたのである。職業プログラマでもあるまいし、なんで自分しか使わないgemのためにユニットテスト書いてんだろ、と薄々思いながらRubyユニットテストについて調べて黙々とassert_equalとか書いてたんだけど、1時間後位にアホか−って思い始めて手が止まってしまった。

クローラって簡単に言っちまえばリモートにあるファイルを読み込んでリンクを抽出するだけである。はっきり言って難しいもんじゃない。なんでこんなもんの為にテストの書き方調べてテスト書いてんだー、みたいに独りで憤ってたんだけども、そもそもRubyでクローラ作るって言ったのも、gem作るって言ったのも全部自分なのである。自分で決めたことをやろうとして面倒臭くて怒ってる自分に対してなんか理不尽さを感じてきて、そもそもなんで自分で決めたことを律儀に守ってんだ?みたいな思考プロセスにはまって「不言実行」とか「有言実行」とか考えるようになったのである。

なので、これからは「不言実行」を心がけていきたいと思う。自分の決めたことに縛られるのはヤメだ。でもそれじゃブログに書くネタもなくなるので、作った物の事後報告をしようと思う。気の赴くままに何か作って、それを記事にするのである。事前に何を作るかなんて決めない。作りたきゃ作るし、作りたくなくなれば作らない。このスタンスでいこうと思う。

心の中のモヤモヤを文章化したらなんかスッキリした。やっとサラリーマン思考から離れることが出来てきた気がする。8年かかった。長かったなぁ・・・・。